心臓外科インド留学日記

卒後沖縄の市中病院で研修し、3年間大学病院の心臓外科に所属していました。2017年3月よりインドのバンガロールにある病院で心臓外科フェローとしてトレーニングを始めました。

日本

先日日本での用事があったため1週間程帰国していました。

 

久しぶりに以前勤務していた病院の手術を見学させていただきましたが、今までとは違った立場での見学だったので非常に新鮮で、色々と感じるところがありました。

 

やはり執刀医の手術の質はインドに比べて非常に高いなぁと改めて実感しましたが、手術のアシストという点では経験が少ないためかインド人の方が手が動いてる印象を受けました。

 

あと1年でインド留学が終わりますが、そのあと日本でトレーニングを積むのか、他の国に留学して経験を積むのか、非常に難しいところです。

1年終了

インドに来てから1年が経ちました。

生活の部分では大変なことの方が多かったですが、トレーニングの面だけでいうとかなり充実した1年だったかなあと感じます。

 

ようやく弁置換の執刀もまわってくるようになりましたが、改めて考えると、この病院で5年間働いているレジデントが初めて執刀させてもらえる症例を、英語もろくに話せない来て1年の日本人が執刀させてもらえるということは本当に恵まれていると思います。

そしてそれを自分のことのように祝福してくれる同僚に本当に感謝です。

 

あと1年...

感謝の気持ちを忘れずとにかく頑張ろうと思います。

電気メス

今の上司は常に電気メスの出力を50にしろと言ってきます。

新しくローテーションしてくるレジデントが20や30にしていると「小児の手術をしてるんじゃないんだぞ!」と怒鳴られます…

 

ちなみに大動脈と肺動脈間の剥離やSVCのテーピングの際も常に50にしています。

最初の頃は怖くて仕方なかったのですが、慣れてくるとかなり快適です。

何より止血が早くでき、全体的にスピードが上がるのは大きな利点だと感じます。

クリスマス

今いる病院でもほとんどの人はヒンドゥー教であり、キリスト教の人はごくわずかです。

ただインドでもクリスマスのお祝いはかなり盛大にやるようです。

 

今週は日替わりで各病棟のクリスマスイベントがあり、病院全体がクリスマスムード一色といった感じでした。

ちなみに仕事中にクリスマスの準備をしているので、病棟の業務はそっちのけです…笑

 

一昨日ICUのクリスマスイベントに誘われたので手術の合間に行ってきたのですが、ものすごい音量の音楽に合わせ看護師が本気で踊っていました(日本の余興と比べると本気度がすごいです)。

 

インドのニュースを見ると宗教間の争いが問題になっていることも多いのですが、今回のクリスマスイベントのように他の宗教を受け入れる習慣というものは非常に大切なものなのかなと感じました。

レジデント3年目

今のコンサルタントの下には3年目のレジデントが2ヶ月程のローテーションで回ってきています。

 

こちらの3年目はカニュレーションや内胸動脈採取を始めるようになる時期であり、皆自分にやらせろというアピールがすごいです。

いつも手洗いの前に私がコンサルタントに電話をして「今から始めます」と伝えるのですが、電話の前に「カニュレーションさせてもらえるように頼んでくれ」と言ってきたり、私がカニュレーションをするように言われた時でも「開胸とpurse stringの糸かけまでは自分にやらせてくれ」とかしつこいくらいに頼んできます。

 

今のコンサルタントは「自分のやり方を完全にコピーするように!」といつも口すっぱく言っており、全ての操作で電気メスを50Wを行ったり(内胸動脈を採取するときは25W)、カニュレーションの糸かけの針糸は全て4-0prolene 26mmとかなり大きな針を使ったり、いくつかこだわりがあります。

 

レジデントもやる気があるのは良いのですが、実際にやらせてみると皮膚を電気メスで焦がしたり、大動脈の糸かけが深すぎて血腫を作ったり、自分のやり方を突き通そうとしたり、みていてヒヤヒヤすることが多いです。

自分が3年目の時を考えたらまだ何もできない時期だったので偉そうなことは言えないですが、なんとかローテーションしている間にカニュレーションを自信を持ってできるくらいまで指導できるようになればいいなあと考えています。

留学の時期

私がインドに来たのはちょうど医者6年目になる頃でしたが、留学の時期はどちらかというと早い方だと思います。

ただインド限定ですが、このくらいが今考えると一番良い時期だったのかなと感じます。

 

ちなみに日本ではほとんど執刀経験がなく、カニュレーションに少し慣れてきたかなという程度でした。

 

インドでの最初の半年間はたまに開閉胸をやらせてくれるくらいで精神的にもかなりきつかったのですが、その後新しいコンサルタントの下についてからは、開胸・人工心肺装着・人工心肺離脱・閉胸をほぼ全ての症例でPhysician Assistantを前立ちにして行い、最近ではCABGのときは全例で内胸動脈採取を任せてくれるようになりました。

 

執刀経験を積むにはインドは不向きかと思いますが、人工心肺着脱、内胸動脈採取等の基本的な手技を莫大な数経験できているのは自分にとってかなり大きなプラスになっていると思います(執刀経験を多く積んだ人にとっては退屈で仕方ないかもしれませんが・・・)。

 

同年代の心臓外科医がどのようなことを日本や他の国でやっているのか気になるところではありますが、ここにいる間に基本的な手技を完璧にすること、基本的な手術を自信を持って執刀できるようになることを目標にしてがんばろうと思います。

僧帽弁形成術

インドの大規模病院にいて一番感じる大きなメリットは色々な外科医の工夫を見ることができることだと思います。

 

今のコンサルタントの僧帽弁形成術を行う際の工夫の一つはリングの前尖の中央の部分を結紮する時に間にフックを挟みあえてゆるく結紮するということです。

理由は直接は聞いたことはありませんが、大動脈弁との干渉を予防するためでしょうか。

 

それがどの程度術後経過に影響するのかはわかりませんが、理論的には非常に納得できる工夫だと思います。